SPECIAL JOURNAL  2018-09-03

ワーキングとカジュアルの両輪で規模を拡大する「ブルーモンスタークロージング」

8月に、カジュアルワークブランド「ブルーモンスタークロージング(BMC)」を展開するブリッツワークスの青野睦社長と対談した。

対談記事はこちら↓

【南充浩×青野睦 特別対談】ジーンズそのものには価値がない?

青野社長と初めて出会ったのは2015年秋の東京でのセミナー会場だった。
台東デザイナーズビレッジで初めての無料セミナーを開催させてもらった際のことだ。

当日は80人くらいの聴衆にお集まりいただき、その中に青野社長がいた。

割合に前の方の席で、眼光鋭く睨みつけられていた(そのように見えた)ので、「おお~。この後、しばかれるのかな?俺」と恐れおののいていたが、実は当方のブログの読者で、非常にフレンドリーに接していただき安心したことを覚えている。

 

ジーンズ業界は既にレッドオーシャン

その時、「今、エドウインで勤務していますが、もうすぐ退職する予定です」とおっしゃっていて、対談でも触れられているが、「この人、大丈夫かな?」と心配になった。

なぜなら、これまで何人も大手ジーンズ専業メーカーを退職した人(リストラで退職させられた人も)や独立した人を見てきたが、ビジネス的に成功した人があまりいなかったからだ。

理由はさまざまあるが、時代のせいといえば、そういえなくもない。

まず、独立して新たにジーンズブランドを設立したとして、すでにジーンズを扱うブランドは市場に溢れている。
90年代のビンテージジーンズブーム以前なら、まだしもそれ以降はさまざまなテイスト、価格帯でジーンズブランドが市場に無数にある。

高価格から低価格まであらゆる価格帯の商品が出尽くしている。
またテイストも、ビンテージテイストからセクシー系、トラッド系、ドレス系とさまざまなジーンズがすでに存在している。

昔なら、価格帯、商品テイストともに抜け穴があり、そこに当てはめれば新ブランドとして成立しやすかったが、ビンテージジーンズブーム以降、無数に増えたジーンズブランドは、その抜け穴をすべてふさいでしまった。

今更、新しい切り口・新しい価格帯のジーンズブランドなんて作るのは相当に困難な作業になる。

次に、ジーンズメーカーに勤務した経験を生かしてOEM(相手先のブランドの生産請負)・ODM(相手先のブランドのデザインから生産まで請け負う)会社を設立するパターンも多い。
しかし、これも業界にはいつの間にやらOEM・ODM会社が無数に存在し、値段のたたき合いになってしまっている。
おまけに好調ブランドは数少ないから、その少ない勝ち組ブランドに対して、数多くのOEM・ODM会社が群がりぶら下がるようになっている。

今更、新参OEM会社を設立しても、既存先行会社に勝ち抜くことは至難の業だといえる。

現に、当方の知り合いが何人かOEM会社を設立しているが、なかなか商況は厳しい。

だから、「青野さんは独立してどうするつもりだろう」と心配をしたのである。

とはいえ、2016年年初に「退職しました」との案内をいただき、そこからお付き合いが始まった。

 

厳しい市況の中で飛躍するBlue Monster Clothingの秘策

半年後の夏に東京出張の際、お会いした。
そのときすでにBMCというブランドを作っておられ、4900円という価格帯での販売を決めておられた。

だれもがやりたがらない中価格帯で、ちょっと派手めな洗い加工が施されたジーンズ。

果たしてどれほど売れるのだろうか?とまた心配になった。

しかし、出来上がった物は仕方がないからそれが上手く行ってもらわないといけない。
こちらの心配をよそに、秋口から動きは悪くなかったようだ。
もちろん大手メーカーに比べると取扱量なんて知れていただろうが、独立したばかりの売りにくいブランドの割には比較的順調にスタートできていた。

これは青野社長のこれまでの人脈とか営業力とかの賜物だろうと思う。

そこから某ワーキングユニフォームメーカーとの取り組みが決まったり、某専門店の依頼で高額なブランドを開発したり、とますます順調に動き始めた。もちろん、見えない苦労はあったことだろうとは思うが。

そして、その「中途半端で売りにくい」はずの価格帯のBMCの取り扱い店舗数が2017年くらいから飛躍的に伸び始めた。

理由は対談記事中でも語られているが、「カジュアルチェーン店」一辺倒から「ワーキングユニフォーム店」への卸売りも視野に入れたからだ。

カジュアルチェーン店は、ユニクロに押されて厳しい状態が続いている。
売れ行きが厳しいから新ブランドの採用も鈍いし、採用されたとしても数量がまとまらない。
売れ行きが不安だから少なめにしかバイイングしない。

だからカジュアルチェーン店を販路としていると、ブランドはなかなか売り上げ規模を拡大できない。

そこで、ワーキングユニフォーム業界に「同じ商品を同じ値段」で売ることを開始した。
これがBMCの拡販につながり、現在、合計150店舗くらいに卸すまでに成長した。

ワーキングユニフォーム店への進出を模索したカジュアルブランドも過去にはあっただろう。しかし、「同じ商品を同じ値段で売る」という取り組みを実行に移して、成果を出したブランドはない。

その点で青野社長の活動は画期的だったといえる。

奇しくもワーキングユニフォーム業界の雄「ワークマン」がカジュアル分野への進出を開始した。
ほぼ同じタイミングでBMCはカジュアル業界からワーキングユニフォーム業界へと進出し、すでに一定の販路を押さえている。

なんだかんだと綺麗ごとと並べたところで、衣料品は工業製品だから、数量がまとまればまとまるほど、利益が増えるばかりでなく、商品の品質も向上する。

カジュアル業界がイメージダウンを嫌って、ワーキングユニフォーム業界に飛び込むことをためらってきたのを、我武者羅なBMCがすんなりと飛び越えてしまった。

青野社長の行動力もあったが、業界が変わろうとしているタイミングが重なったともいえる。
しかし、「運も実力のうち」で、力量はあるけど運に恵まれないという人もいる。
青野社長はその逆で運にも恵まれたといえる。

ジーンズが元々作業着であったことを見てもわかるように、元来、ワーキングとカジュアルの親和性は高い。

カジュアルとワーキングの両輪で走りだしたBMCはどこまで規模を拡大できるのだろうか。
期待しつつ見守りたい。

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南充浩
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