ブランド・ビジネス  2019-01-14

衣料品において原価率が高いことと品質が高いことは必ずしもイコールではない

最近、製造原価率の高いことを自慢するブランドがチラホラと現れていますが、衣料品の場合、原価率が高いことと品質が高いことは必ずしもイコールにはなりません。

このあたりがややこしいのですが、衣料品の原価率が高くなった場合、2つの要因が考えられます。

1、高額な材料を使ったり、手の込んだ仕様なので縫製工賃が上げたりした

2、非効率な作り方をしたか、ミニマムロットを割り込むほど少量しか生産しなかった

という場合です。

同じ原価率上昇といっても、1と2では出来上がる商品はまるで別物です。

1の場合は、いわゆる「高品質商品」になりますが、2の場合は製造原価がいくら高くなっても「低品質商品」しか出来上がりません。

最近の「原価率高い自慢のブランド」は、恐らくは1の意味で「原価率の高さ」を誇っているのでしょうが、実際の場合は2であることも少なくないようです。

エバーレーンくらいに製造コストを明示していれば話は別ですが、近年登場している「原価率高い自慢ブランド」の多くは、ブランド側が「うちの原価率は〇〇%もあります」と自己申告しているだけにすぎません。言うだけならタダなのです。

クレッジというアパレルとメガネスーパーの2社を立て続けに再建した星﨑尚彦社長は、クレッジ社長時代に34~35%あった原価率を17%にまで引き下げることで黒字化することに成功しています。

 

 

アパレル業界に多数いるイシキタカイ系の人たちは「35%の原価率を17%に引き下げた」と聞くと、目くじらを立てるかもしれませんが、原価率の引き下げを模索するのは経営者としては当然の姿勢です。

近年は、世界的低価格SPAブランドの低工賃問題などが報道されるようになり、原価率の引き下げというと「工賃を叩いた」と思いがちです。また使用する材料の品質を下げたりすると思いがちです。

しかし、星﨑社長はそうではなく、使用する工場を集約化し、商品のディテールを簡略化することや製造工程を簡素化することで縫製工賃を抑え、使用する生地をいくつかの品番で共通化することで生地値を抑えるといった手法を使いました。

これが本来あるべき原価率引き下げの努力といえます。

ではどうして「原価率高い自慢のブランド」が多数出現するに至ったのでしょうか。

 

 

2008年のリーマンショックを契機にアパレル各社は一層の販売不振へと突入しました。

少しでも利益を確保するためにやみくもに、使用素材の品質を下げ、縫製工賃をとことんまで叩きました。その結果、某百貨店ブランドのセーターは原価率18%まで下げられたといいます。しかし、使用素材の品質を落とし、工賃を叩いたので、このブランドのセーターはこれまでとは比べ物にならないほど品質は低下しました。にもかかわらず、店頭販売価格は従来通りかそれよりも少し高めに設定されたのです。

こういう負の取り組みがあちこちのブランドで行われ、その結果、百貨店向けブランドやファッションビル向けブランドの多くは値段の割に品質が著しく低下しました。

「原価率高い自慢のブランド」が登場したのはこうした百貨店向けブランドやファッションビル向けブランドに対するアンチテーゼだったと考えられます。

これは正しい原価引き下げがなされず、製造加工業者にリスクを押し付ける誤った原価率の引き下げがアパレル業界に蔓延した結果だといえます。

 

しかし、「原価率高い自慢のブランド」も決して正しい原価率の上げ方をしているわけではなく、多くの場合が先に挙げた「2」の取り組みの結果、原価率が高くなってしまっているという状態にあります。そしていつの間にか「原価率の高さ」がまるで販促のキャッチコピーのように独り歩きをしてしまって、陳腐化してしまったというのが2018年の実情といえます。

アパレル業界は今一度、効率的な物作りということに改めて取り組むべきではないでしょうか。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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