ファッション全般  2019-01-27

アパレル業界ビジネスモデル解説 ー卸売編

アパレル業界と一口に言ってもその業種は様々です。最近ではSPAが当たり前の世の中になり、ビジネスモデルがいまいちアップデートされない「卸売」という業態がございます。筆者はこの卸のアパレル出身という事もあり、改めてこの「卸売」という業態について解説してみました。

 

○仲介者がいる=コストが高くなる

卸とは、製造元と小売店舗をつなぐ役割になります。筆者が勤務していたアパレル商社でいうと、

 

「ブランド側が商品を生産→アパレル商社が仕入れ→国内セレクトショップがそこから仕入れ」

 

という流れになります。で、小売側が卸売から仕入れるコストなんですが一例を記載します。

 

・買取り

取引条件は掛け率が上代からの50%。つまり10000円の商品をセレクトショップは5000円で仕入れる事になります。

 

・委託

取引条件は掛け率が上代からの60%。つまり10000円の商品をセレクトショップは6000円で仕入れる事になります。その代わり、在庫が余れば返品してもOK。

 

ざっくり言いますとこんな感じ。掛け率もそれほど誤差は無いかと思いますが、セレクトショップの販売力が強ければもっと好条件で委託で取引きさせてもらえたり、逆に新規取り引きなら買取りでも55%程度に値上げされたりと、買い手と売り手のパワーバランスによって条件は変動します。

 

これパッと見たら「国内セレクトが仲介を通す意味ある?」と思う方もいらっしゃる事でしょう。仲介する事によってコストが高くなる訳ですから。しかし、インポートを直接買い付けに行くとなると、ショップによっては無駄な海外出張が発生する可能性があります。そして、卸業者がブランド側から仕入れをおこしているので、シーズン途中に在庫を交換してくれたり、または追加発注させてくれたりというメリットがあるのです。とはいえ、掛け率50%という事は原価率50%と同義ですので、消化率がどんどん落ち込んでいる昨今では、中々やっていけるショップは少ないでしょう。

 

○セレクトが弱体化すると困るのは卸業者

こんな原価率でセレクトもやっていける訳ありませんから、大手セレクトはオリジナル商品を作り出します。つまりSPA化ですね。しかし全てのセレクトショップが自社製品を販売できるほど余力がある訳でも無いので、地方の小規模セレクトは純粋なセレクトショップのまま運営したりしています。昨今は競合他社が増えすぎたせいかアパレルショップの消化率がどんどん下がっています。そうなるとセールをしなければ在庫をはけないのですが、原価率が高いとそれも限界があります。結果、地方セレクトが疲弊し、卸業者から仕入れをおこせなくなってきます。つまり、今の時代、現状の掛け率では卸側もセレクトショップも継続的にビジネスを行うのは難しいのです。

 

○卸業者が小売に参入

卸業者といえど、自社でブランド側から仕入れているのですから小売にも参入できます。ブランド側から直接仕入れるのですから、もちろん原価率はセレクトが仕入れるより低いです。筆者の古巣も多分に漏れず百貨店に直営店を多く持っています。これなら確かにビジネスがしっかり成り立ちそう。。と思いきや、卸業者がそもそも専業ではない小売に進出したからといって、ブランディングや小売のノウハウが身につくものでもありません。小売事業者と違いブランディングのプランもMD設計の立案も販売員の育成も不十分な企業が多いんです。結果、ブランド力に依存せざるを得ず、本国が頑張らないと日本国内でもセールスを伸ばすのが難しいで。ブランド認知が進むと、代理店契約を切って本国100%出資の日本法人ができるのはこういった背景があるからです。

 

老舗アパレル商社の卸売ビジネスモデルは筆者が新卒で入社した10数年前から大して変わっていません。店頭でもECでもプロパーで売れる率はどんどん下がってきており、仲介が増えるにつれてコストが上がっていくとユーザー側は無駄に値上げを強いられる事になり、コストパフォーマンスは低下し、更に商品が売れなっていきます。卸が全く必要ないとは言いませんが、縮小していく市場で今後どこで利益を確保していくか、卸売側もそろそろ変革していかなければならない時期ではないでしょうか。

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

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