過去記事  2016-04-30

ファッション教育が腐敗する3つの原因

僕が講師をしている専門学校には当たり前ですが日々、入学を希望する学生さんが説明を聞きにやってきます。どの学校でもそうですが、講師が学生さんに説明する訳ではなく、営業担当者がまず話をするのが一般的です。

とある学校では毎年のように在校生から「騙された」「夢ばっかり見させて、現実の講義内容が伴っていない」という声をよく耳にします。僕が見ているクラスの学生で自分の学校に満足している人間はほとんどいないんじゃないか?と思ってしまう程苦情がきます。毎年変わらず同じ声を聞きますので自分なりに原因について考えてみました。

原因①:誇大広告

専門学校の一番の売りは何なのかと言いますと「卒業生」です。業界で大活躍している卒業生がいれば、

「当校を卒業した学生は優秀です。」

と宣伝する事ができます。しかし、毎年数百人も学生が入学してくる学校もあるのですから、卒業生に優秀な人材は必ずいます。これ単に確率の問題で、規模が大きい学校ほど優秀な卒業生は多いのです。ではその卒業生が「学校のカリキュラムが大いに役立ったから今の自分がある」と思っている人がどれくらいいるのでしょうか。専門学校卒で業界で勤務されている方にたくさんお会いしてきましたが「授業が役に立った」と言っている人はほぼいません。夢ばかり見させて足元の「授業」をおろそかにしているのはどうかと思います。

余談ですが、僕は教育機関の意義は「底上げ」にあると考えています。その件につきましては、

コレクションに関わる事を夢で終わらせない為に

こちらの記事に書いていますのでよろしければご参照ください。

原因②:出口と講義内容のミスマッチ

これもこのブログで何度が書いていますが、ファッション業界の求人の9割以上は販売員です。マイナビなどの就活サイトで確認してもらえればわかるでしょうし、直接学校へ寄せられる求人もそんな割合です。専門学校は「デザイナー」であったり「パタンナー」「バイヤー・MD」「スタイリスト」などなど様々なコースがありますが、ほとんどの学生が結局は販売員として就職していく訳です。ではその学生たちがしっかりと販売員としての教育を受けているのかというとそうではありません。

そして企業の求人とファッション専門学校の学生募集人員の比率もおかしい。9割以上が販売員の求人であるなら専門学校の募集人員も9割は販売について何らか関連あるコースでなければなりません。ですが、専門学校も商売でやっている以上、キャッチーで人気のあるコースの人員を拡充します。デザイナーやパタンナーの求人って少ないんですが学校のクラスはそれに反して全体の多くを占めます。デザイナーを目指すのが悪い事ではありませんが、入学前の学生に真実を伝えているのか疑問です。先述しましたように、学生に営業をかける段階で専門学校は誇大広告をするケースがあります。出口の事をしっかり教えずに軽はずみに求人が少ない職種を勧めるのはいかがなものでしょうか。そして、仮にデザイナーのように求人が少ない職種を目指したとしても、ちゃんと潰しがきくようなカリキュラムを組む事も必要なのではないでしょうか。

原因③:講師の質が低い

専門学校の講師になるのには教員免許が必要ありません。免許が質を担保するのかというと別かもしれませんが、とりあえず学校側が「講師」だと認めればその時点で講師になれます。そして講師を専属でやるようになると現場からどんどん乖離していきます。僕が講師をしている学校でも似たような事例がありますが、現場経験2~3年程度でそこから講師を10年続けていたりと…。そうなってくると情報がアップデートされないどころか、経験としても浅いと言わざるをえません。僕もまだまだ若輩者ですが日々の情報収集に加え現場での生の情報が無ければ人に教えていくのは難しいと感じています。しかしこういった状況がファッション教育現場では日常的に繰り返されている訳です。ひどい講師になると授業でただただテキストを読み上げているだけ…なんていう事もよく学生から耳にします。

そしてこういった事例は特にファッションビジネスコースという領域で起こりやすくなっています。推測になりますが、デザイナーやスタイリストなどの職種では起業されていたりフリーでお仕事をされている方が多いように思います。しかし販売やバイヤー、MDという領域ですと現場で第一線で活躍されているのはほとんどがサラリーマン。講師として教えに来れる人間の数が圧倒的に不足しているように感じます。仮に起業やフリーランスとして独立した優れた方がいたとしても、講師としての給与は恐らくそういった方々が日々得ている報酬と見合わず時間対効果を考えると受けてもらえない可能性が高い。学校として明確なヴィジョンを伝えてそれに共感して頂くか、講師という肩書きを利用して別のビジネスにつなげて頂く、学生の青田買いをしてもらうなどのメリットが必要になってきます。

悪質な営業手法をやめ、必要とされる商品を作るべき

ここまで見てきましても、やはり専門学校の努力が足らないと言わざるを得ません。産学連携といった取り組みもちらほら見かけますが、ニュースになってからの進捗を聞いた試しがありません。企業の方とそのお話をしますが、結局専門学校が企業に丸投げしているような印象を受けます。企業とコラボしてショップを展開するのも結構ですが、しっかりと売上を作る為に専門学校がどの程度指導しているのでしょうか。そして、ショップを企画できるような教育を事前に施しているのでしょうか。学生の質が低いなどという言い訳もよく耳にしますが、ここの意識改革がなければいくら企業と組んだところで結果は目に見えているでしょう。まずはバカな営業手法から見直し、本当に企業が求めている人材を育て学生満足に繋がるような教育を作りたいものです。

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

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