私が服を好きになった理由  2019-04-16

私が服を好きになった理由 #3

 

私にとってファッションは、着るものではなく「見て」楽しむものでした。

 

周囲に馴染まないファッションを好む、母へのあがき。

 

私の母は近所ではちょっとしたファッションアイコン。ボブの細いスパイラルパーマに、エスニックとモードをミックスさせたスタイル、年中欠かさないイカつめサングラスに、昔やめたタバコの代わりにガムを噛む姿。参観にくるとたちまち「お前の母ちゃんファンキー」といわれていましたが、家族思いで人一倍心優しい母はそんなことはものともせず、娘の晴れ姿を嬉しそうにいつも手をブンブン振りながら見にきてくれていました。

 

私は生まれてこのかた、これ以外の母のスタイルを見たことがありません。トレードマークであるパーマは、むしろ毛根からクリクリの毛が生えていると思っています。自分の“好き”を突きつめるこだわりを母から学び、今は服以外にカルチャーも共有しあうくらい(結局、子は親に似る?)母の感性に共鳴していますが、当時、芽生えたての感情で右往左往してしまう思春期の生意気娘は、周囲の綺麗めママさんと異なる母の嗜好に抵抗。浮いてしまうことに恐怖を覚え、周囲に馴染む服や個性を殺す服が欲しいとわざと母に伝えていたように思います。

 

「服はただの装いではなかった」一冊のファッション誌に感銘を受ける。

 

母の一存で背負わされた学年唯一のくすみローズカラーのランドセルも板についてきた小学4年生の頃、一冊のファッション誌と出逢います。あがき続けた結果、むしろファッションに嫌悪感さえ持っていた私は、友だちたちがメ◯ピアノなどチャーミングな服を着させてもらっているのを脇目に、男顔負けの運動神経と陽気さを収得。もう自分自身に諦めていたこともあって、動きやすいパンツやジャージ、スニーカーを自分のワードローブにしていたのですが、私とは裏腹に女子力が高く幼少期より美容師になると豪語していた素敵な幼馴染みに心なしか憧れて、近付けなくてもまあ見てみるか…と軽い気持ちで、彼女が読んでいたファッション誌(「ラブベリー」だったかな?笑)を、母と目を合わさず買い物カゴへほおりいれます。

 

巻頭ページを開いた際の、キラキラした世界の衝撃……!出ている同世代のモデルさんたちが、自分を諦めて人のせいにして偽って生きていた私とは違い、みなが自信を持って輝いて誌面に立っているように見えたのです。

 

ファッション誌は服がメインの雑誌。なのでモデルさんたちの素質も当然のことながら、すごいのはモデルさんたちではなくこの子たちを輝かせて魅せている「服」なのかもしれないとその時直感が働き、それぞれ悩みやコンプレックスがあるのかもしれないけど、服を着ているその瞬間だけはそういったしがらみも感じられないほど眩しく舞うことができるのでは?と、ファッションの魔法だと思いました。私にとっての革命でした。

 

いつか着たい服をどうどうと着こなせる、立派な女性になろう。

 

ファッション誌を読んでから価値観が一変した私ですが、すぐに服を買おうとはしませんでした。あまりの感動だったために、今の自分ではダメだと思ったのです。ここから密かに自分を変える革命運動がスタートします。

 

2か月に一度のペースでファッション誌をおねだりし、それを見ながらこの服を着る人だったらどんな女性だろうとマインドや生活スタイルを連想、テストを早く終わらせて自分が着たい服を自由帳にひたすらデッサン、休みの日になればパソコンを開いて好きなモデルさんたちの私服をアメブロでチェック、買えなくても見たいと店頭へ走り収穫としてカタログをゲット、それらをひたすらスクラップして自分の“好き”を研究……。いつか憧れた服を着られる日を夢見て、くる日もくる日も追いかけました。

 

ここではまだ母が持ってくる服をどちらがいいか選ぶようになったくらいで、スタイルにさほど変わりはありませんでしたが、周囲に馴染むファッション、自分をさげすんで着ていた男勝りの服という観点は消え去っていて、「ただ自分らしく服が着たい」その一心で、ファッションを探求する日々や時間が楽しくてなりませんでした。

 

忘れられない一着。人生を開拓してくれたファッション。

 

習っていたスポーツもひと段落がついた小学6年生の冬。ちょうどはじめてファッション誌を読んでから2年が経とうとしていました。インプットのファイルが何冊にも膨れ上がり、自分の“好き”をようやくここで整理。その頃ギャル誌(「Ranzuki」や「Popteeen」)に移行していたこともあり、渋原系ファッション(渋谷のギャルスタイルと原宿のストリートカジュアルのミックス)で古着にとんでもなく魅力を感じていた私は、はじめて自分の意思を反映させて買ってもらう服を「古着のハーフ丈のオーバーオール」にすると心を決めます。

 

この時にはもう母と同じかそれ以上派手な服を好んでしまっていたので話も合い、ひとつひとつのデザインやダメージ、サイズ感をふたりで吟味しながら、とっておきの一枚をセレクト。それを最初に身にまとい出かけたお気に入りのアーティストのライブの日は、玄関から一歩外へ出た瞬間に世界がとんでもなく拓けたように思え、優しく微笑みかけてくれているように感じました。かつてファッション誌で見ていたモデルさんのように、もしかしたら今ちょっとだけ普段の自分より素敵に見えているのかもしれない…… プラスになんてならなくてもいいから、マイナスから0へ、ただみんなと同じように前を向いて歩けているかもしれない!なんて。これまでにない幸福感と高揚感でした。

 

この日覚えた感動は、今も昨日の記憶のように鮮明に心に刻まれています。周りと同調することしか頭になかった自分の弱さ、身近な人に引き立て役といわれてもヘラヘラと過ごしていた悔しい日々、すべてがこの日この瞬間にいなくなり、少しだけ自分のことを認めてあげて好きになることができた気がしています。見た目を繕う外見的な装い以上に、マインドが変わり行動が変わっていた、それがなにより嬉しかったのです。

 

これまで私をバカにしていたプライドエベレストの友だちが、影で自分の母親に、私が着ていたオーバーオールと同じのを買ってきてと密かにお願いしていたと、後日、風の噂で聞きました。心の中で小さなガッツポーズをした私の、あたらしい人生がはじまりました。

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松本寧音
WRITER

株式会社StylePicksライター、ディレクター。2017年ファッション専門学校を卒業したのち、株式会社StylePicksへ入社。ライティング業務、コンテンツ制作を中心に、他メディアへの執筆も行う。

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