ブランド・ビジネス  2019-04-22

「ビッグジョンから逃げない」事がブランドの再強化につながる

ビッグジョンの2019秋冬展示会が開催されました。

商品内容としては「ベーシック強化」を掲げており、斬新な新規アイテムや新色・新柄などは出ていませんでした。

ビッグジョンの主力「コンプリートフリー」の定番商品

 

「M3シリーズ」ではシルエットはそのままで、新柄のラバープリント迷彩柄、バンダナ柄の布を当てたリペア加工、迷彩柄の布を当てたリペア加工を新柄として提案しました。

ラバープリントの迷彩柄

 

迷彩柄の当て布のリペア加工

 

M3シリーズはこれまでメンズのみの展開でしたが、レディースの要望が増えたため、レディース専用のサイズを新設しるとともに、デニムスカートも加えました。

 

今春から企画内容を刷新したレディースブランド「ブラッパーズ」は対象年齢を顧客層に合わせて30代半ば以上へ上げ、ワイドシルエットと股上やや深めを基本として、定番ストレートのほか、ワイド、ワイドストレート、アシンメトリーアンクル、アンクルフレアの4シルエットを提案します。また数型程度トップスではホールガーメントの無縫製セーターを差し込みます。

リニューアルした「ブラッパーズ」

 

ブラッパーズのホールガーメントカーディガン

 

 

今回、展示会場で、同社の清水剛社長のお話を伺うことができたので、まとめてみたいと思います。

 

清水社長が2017年に就任してから、当方が詳細に話を伺うのは初めてのことになるので、これまでの経緯を踏まえていくつか質問をしてみました。

 

96年のビンテージジーンズブーム、2005年のプレミアムジーンズブームを経て、各ジーンズブランドは「高額品を売ること」に重点を置くようになりました。

98年に一大ブームを巻き起こしてから、低価格品で国内アパレル業界を席捲し続けるユニクロとの住み分けの意識も働いたと考えられます。

ビンテージジーンズブームが起きるまでは、国内のジーンズブランド各社は、6900~9800円が中心価格帯でした。しかし、ブームを起こしたエヴィスや旧ドゥニームなどのビンテージブランドは、1万円台後半という高価格帯を中心としました。

周囲の懸念をよそに、ブームに乗った各ブランドでは1万円台後半の商品が好調に動き、それまでの専業メーカー各社も本格的にその価格帯に参入しました。

 

一方、98年のフリースブームで全国区となったユニクロは、当時2900円、現在は3990円のジーンズを主力としており、そのクオリティは国内専業メーカーの7000円くらいの商品と変わらないという評価を得ました。

 

90年代後半以降の国内専業メーカーは、この低価格と高価格の二極化に如何に対応すべきかに悩み続けてきたといえます。

 

そして2005年にピークを迎えたインポートプレミアムジーンズでは2万円台~3万円台という欧米ブランドが注目を集め、ジーンズ専業メーカー各社はますます両極に目を奪われてしまいます。これがジーンズ専業メーカー各社の失速の一因となったと当方は見ています。

 

しかし、昨年あたりから、大手専業メーカーとしてただ二つだけ残ったエドウインとリーバイスが、かつての7000~9800円の価格帯のジーンズを再強化に乗り出しました。価格的には原点回帰したといるでしょう。

 

 

この価格戦略について清水社長は

 

「かつてはライバルだった二社ですが、ビッグジョンは大きく縮小してしまいました。ピーク時の10分の1程度ですから、規模的に追随するのは得策ではないと考えています。現在のビッグジョンの商品は特殊な商品を除いては、1万2000~1万6000円が中心価格帯となっています。これを崩すつもりはありません。6900円商品に追随するつもりもありませんし、2万円以上の商品を増やそうとも思っていません」

 

といいます。

 

かつて、2000年前後のころは、レディースジーンズブランド「ブラッパーズ」が同社の主力ブランドとなっていましたが、現在のブランド構成比については

 

「昔は17個ものブランドを所有していましたが、現在は『ビッグジョン』『ブラッパーズ』『ワールドワーカーズ』の3つに絞りました。低価格ブランド『GLハート』や『ジョージア・ラブ』、子供服の『Uボート』などはすべて廃止しました。そして、売上高の65%は『ビッグジョン』が占めており、『ブラッパーズ』が30%強、残り数%が『ワールドワーカーズ』になっています」

 

とのことです。

 

この構成は狙っていたのでしょうか?

 

「はい。狙っていました。ビッグジョンというのは当社の看板であり、設立70年を越えるブランドで、現存する国内最古のジーンズブランドです。90年代後半~2010年頃にかけてビッグジョンのイメージが平凡化してしまい、売れ行きが下落し続けました。そこで次々と新しいブランドを作ってきましたが、結局それは『逃げ』に過ぎず『ビッグジョン』というブランドと向き合っていなかったのだと反省しました。2年前に社長に就任するに際して『もうビッグジョンから逃げない』と決め、再強化に乗り出しました。そして、それがほぼ意図通りになり始めたという感じです」。

 

以前は四国や山口県、中華人民共和国に大規模な自社縫製工場を所有していましたが、現在、自社縫製工場はすべて手放しています。ビッグジョンは、国内協力工場に生産を依頼しています。今後、再度、自社縫製工場を所有する考えはあるのでしょうか?

 

「再出発するにあたって、原点回帰を図りました。創業者の尾崎小太郎さんの時代には自社縫製工場を持っておらず、地元の岡山県内の縫製工場に製造を依頼していました。我々もその精神に立ち返り、地元の縫製工場や洗い加工場さんに生産を依頼して、みんなでビッグジョンの商品を作ってもらうことを心掛けています。ですからもう一度自社縫製工場を持とうとは考えておらず、持つとしてもせいぜいサンプルを縫える程度の小さな工場になるでしょう」

 

今回、清水社長の話を伺って、「地に足のついた着実な方針」だと感じました。アパレル業界では実現可能かどうかは非常に怪しいが、気宇壮大な構想を語り散らす経営者が持て囃される風潮が昔からあります。まさに「言うだけならタダ」というやつです。

ですが、多くの場合は失敗に終わり、踊った人も踊らされた人は何食わぬ顔をして、また別の場所で踊り・踊らされ始めます。

ともすると面白味のない方針だとも言えますが、着実な足取りを重ねて、歴史あるブランド「ビッグジョン」が小なりといえど、もう一度、業界で強い存在感を発揮してもらいたいと思います。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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