ファッション全般  2019-05-21

ファッション誌で食のページがある理由。

 

以前テレビで、食の専門誌〈dancyu〉編集長・植野さんが出演されていたのを拝見しました。「目の前に出された料理をどうやって美味しく戴こうか…… 食べる行為を愉しむことこそが、“食いしんぼう”だ!」と話す植野さんに、食の価値観を変えられ、心底しあわせな気持ちで満たされた私は、それ以降そんな食いしんぼうおじさんの顔をくり返し、くり返し観る日々を過ごしています。

 

食でいうコーディネートが仮にどんな食材を使ってどう調理するかに当たるとしたら、スタイリングはどんなお皿に盛り付けて副菜にはなにを付けて、どんな順番で口に運び薬味はどのようにするかということ。ファッションに置きかえると、デザインされた服をどんなアイテム・小物と組みあわせるのかがコーディネートで、そのコーディネートや予定にあう香水・ヘアメイク・音楽のプレイリストなど、その日の自分を立ててくれるもののマリアージュをスタイリングと呼ぶのかもしれません。

 

 

ファッション誌に服以外の情報があるのはこのためではないでしょうか。媒体ごとにプッシュされる分野はマチマチですが、ビューティー、カルチャー、インテリア、ウエディング、ホロスコープ、グルメなど、ライフスタイルをとり巻くすべてがファッションの一要素。

 

「着る」という単純な行為で終わらせず、服から最高のライフスタイルをプロデュースすること。こんな服を着る人が、誰とどこへ行き、なにをするかを考え、その先に待っている人やもの・コトとの出会いを育む。そうして服から派生する最大限の体験価値を底上げするために、“オマケ”の域を越えた情報の数々が網羅されていると私は思っています。これがカタログとファッション誌の違い。

 

そんなファッション誌のキュレーションに幾度とのせられてきた私は、週末、いつかのFIGARO japonで特集されていた京都・北大路にある【喫茶 狐菴(こあん)】へいってきました。京都の趣きにたっぷり浸るべく、イッセイミヤケの折り紙トートを片手に。

 

 

美しい楓のカウンターがお迎えしてくれるこちらのお店は、珈琲と日本酒、和菓子のペアリングを嗜めるあたらしい喫茶。ここではよくあるメニューのようなものは置いておらず、あるのはその日に店主が目利きしたとっておきの和菓子のみ。店のコンセプトをゆっくり説明してくれたのち、しっかりと好みをヒアリングしてくれるので、押し付けでもなく、自己満でもなく、自分好みのテイスティングと店主のセンスに毎日違った舌鼓みを打つことができます。

 

 

私がチョイスしたのは、見事なカラーリングの聚洸(じゅこう)のきんとん。この季節ならではの藤の花をイメージした淡いパープルと優しい白の色使いで、手毬のような小田巻(組紐をくるくる巻いた和装のパーツ)スタイルが素敵なもの。お茶を飲むようにうつわをくるくるとまわし、ゲスト自身が気に入った見え方の位置にピッグをさして戴くようです。

 

 

日が落ちたタイミングということもあり、呑んべえということもあり(これが99.8%)、今回は日本酒「城陽」とあわせて。

 

城陽はさっぱりとしたスパークリングワインのような口当たりで、一番はじめに店主がすすめてくださった日本酒です。そのほか候補に用意してくれた中には、一緒に口へほおりいれることできんとんの餡がベリー系の味わいになるという摩訶不思議な赤い日本酒と、くもが多かった天気にあわせた曇天という2種など。ベストマッチングな日本酒、口の中で味覚を愉しめる日本酒、その日の天気にあわせた日本酒と、どれもタイプが異なる提案でわくわくさせられるシンキングタイムでした。

 

 

もともと名古屋でまったく別の仕事をされていた店主は、それまで甘味を誕生日ケーキくらいしか食べたことがなかったらしく、30歳の頃に偶然訪れた京都で口にした和菓子に心を奪われ、京都へ移住されたそう。「人間はこれまでこんなに美味しいものを食べていたのか……!」と、美味しい日本酒・美味しい和菓子のお供に語られるユーモラスな体験談に和菓子に興味をもたざるを得ないヒストリー話が相まって、五感を刺激される実に愉しい食の時間。

 

接客やゲストのおもてなしの仕方(①お店のコンセプト説明 ②好みをしっかりヒアリング ③商品の提案 ④体験価値を底上げする空間づくり)にアパレルと共通しているなと思う点があったり、ファッションで人生が変わった人がいるようにひとつの食べ物で人生は変えられるということだったり……、「おしゃれをしていきたい飲み屋」「感度を高めてくれそうな場所」というふわりとした期待を上回る、ファッション誌のおすすめアドレスならではの「学び」がここにはありました。

 

 

ファッション誌に掲載している“服以外”のトピックスは、それに特化した専門誌とはまた一線を画す視点が新鮮で、本当はかなりおもしろい。

 

ファッションは服と同意の言葉というよりも、「生き方(スタイル)」であったり、「日常をすこしでも良く過ごそうとするはたらき」のひとつなのではと、解釈しはじめている今日です。

 

 

喫茶 狐菴

住所 :京都市北区紫野上門前町66
電話 :なし
定休日:毎週月曜・火曜

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松本寧音
WRITER

株式会社StylePicksライター、ディレクター。2017年ファッション専門学校を卒業したのち、株式会社StylePicksへ入社。ライティング業務、コンテンツ制作を中心に、他メディアへの執筆も行う。

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株式会社StylePicksライター、ディレクター。2017年ファッション専門学校を卒業したのち、株式会社StylePicksへ入社。ライティング業務、コンテンツ制作を中心に、他メディアへの執筆も行う。

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