ファッション全般  2019-07-02

「万人にウケる“謳い文句”なんて存在しない」が、よくわかった話。

 

ど田舎で育ち、ふつうの公立高校を卒業したのちファッションの専門学校へ進学した筆者の周りには、俗にいうファッショニスタと呼ばれる人たちから、ごく一般的な感性を持った友人までさまざまいます。そこが交わる交友関係もあったりして、近頃おもしろい出来事がありました。

 

 

A君は、モードブランドをこよなく愛する正真正銘のファッショニスタ。私が知る限りでもYohji YamamotoやCHRISTIAN DADAなどを颯爽と着こなし、イケているディープなセレクトショップや古着屋をよく知っているイメージ。基本的にはダボついたオーバーシルエットですが、几帳面な性格からか“端正なモード、ワーク、ストリートスタイル”といったところで、いかにもおしゃれ、いかにも服にうるさそう…… と誰もが思うような青年をご想像ください。※「服は量よりも質」のタイプ。

 

A君と仲の良いB子さんは、事あるごとにコーディネートの相談をしてくる旧友のひとりです。身長169cmのスーパースレンダー、いつもふわふわしたカーリーヘアーで元気いっぱいの彼女のワードローブは、ZARA、H&M、Bershkaなどファストファッションで購入したシンプル、タイト、カジュアルな服。海外志向なので、インスタグラムでチェックするラフでクールなセレブの着こなしから着想を得ているのですが、服にたいしての知見はなく、“自分に似合うかどうか”、“スタイルがよく見えるか”をポイントに選んでいるようです。※着回しが苦手なので「服は半使い捨て」。

 

 

そんなB子さんにA君がアドバイスをしました。

 

—「B子さんはもっと服で自分を表現したほうがいいよ。」

 

B子さんは一瞬の隙も与えず、こう言いました。

 

—「は?」

 

やったなコイツ……。私はそっと頭を抱えました。

 

 

服には人ぞれぞれの価値観があります。B君のようにファッションがいちばんの趣味で、ひとつひとつしっかり吟味して選ぶ人もいれば、“生きていくために最低限必要なもの”と考えている人もいます。ファッショニスタは、「もっと服のバックグラウンドを知るべきだ」「服は自分を表現するものだ」「ファストファッションはダサい」と口走りがちですが、それは今目の前にいる一個人に向けた言葉ではなく、自分たちとは別の世界だと“勝手に決めつけている”その他大勢に向けられた言葉ですよね。

 

今目の前にいる人のあたらしい価値観を創造したければ、その人と服の関係に触れてあげる必要があると思います。その人にとって服がどんな存在なのか、服になにを求めているのか。もっといえば、もしかしたら着れない理由やコンプレックスがあるのかもしれないですし。それを聞きも知りもせずに強要しても、私たちの服への思いは彼女には響きませんし、そこからは反感しか生まれないのではないでしょうか。

 

 

いくら業界内ではコピーアイテムだといわれてようが、彼女は好きでシンプルな服を選び、好きだからファストファッションで服を買っています。ファストファッションでおもいきりおしゃれを楽しむ人もいれば、服で個性を表現したいなんてさらさら思っていない彼女のような人もいます。それなりに素敵に着られればいい、強いていえば、このなかから自分に似合うものを教えてほしい、これが彼女の願いだったのに……。それを否定していい理由はどこにもありません。それでこそファッションは自由なのですから、誰もが自分にとって最適な心地よい距離感の中で最大限の喜びを創出してあげれることがもっと多くの人が気負いなくファッションを楽しめる道なのではと私は考えています。

 

 

友人どおしの会話でも、店頭での接客も記事の執筆でも、大切なのは伝える相手が誰なのか。言い方ひとつでとらえかたはウンと変わるものです。

もちろん私もファッションが好きですから、服は大切に扱ってもらいたいし、それがだいじな1着になったらとても嬉しい。どうせファッションに造詣が深いなら、その服のデザイン、素材、シルエット、機能性、トレンド性、ブランド情報など、長所はみなさんなら一通り浮かぶでしょう。 そこから、相手を見極めてしかるべき言葉を選ぶだけでいい。どのポイントが刺さるのか、その心遣いひとつ持っていただきたいものです。そもそも本当におしゃれな人は、良い意味で人は人、自分は自分なので、誰かを否定するような言葉は発しませんしね。

 

 

この時はせめて「こんな服が似合うんじゃない?なぜならあなたはこうだから。」と言ってあげるか、「これならA子さんが持っているあの服にも似合うと思うよ。」と着回しが苦手な彼女の悩みを払拭してコーディネートを解いてあげるとか、そんな言い回しができていたらよかったのになあと、彼女の愚痴を聞きながらしめしめと思いました。

 

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松本寧音
WRITER

株式会社StylePicksライター、ディレクター。2017年ファッション専門学校を卒業したのち、株式会社StylePicksへ入社。ライティング業務、コンテンツ制作を中心に、他メディアへの執筆も行う。

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