店舗マネジメント  2019-07-26

セシルマクビーのデザイン盗用は故意的か?ブランドのパクリ問題で大切な事は何か改めて考えてみた

小嶋陽菜のブランド「ハーリップトゥ」とデザイン類似?セシルマクビーのワンピースがSNSで物議

「セシルマクビー(CECIL McBEE)」の商品が、元AKB48の小嶋陽菜が企画・プロデュースを手掛けるブランド「ハーリップトゥ(Her lip to)」の商品とデザインが類似していると指摘した投稿がツイッター(Twitter)で広まっている。 類似が指摘されたセシルマクビーの該当商品は「フロントボタンタイトワンピース」(8,532円)で、ハーリップトゥの「Puff Sleeve Midi Dress」(2万2,680円/いずれも税込)とシルエットや胸元のカッティング、フロントの白いボタンデザイン、パフスリーブなど、共通するデザインが複数箇所あるという。

 

ファッション業界では必ずと言っていいほど起こるデザインの「パクリ問題」。今回は、小嶋陽菜さんのブランドのワンピースをセシルマクビーが模倣したとして物議を醸しています。セシルマクビーを運営するジャパンイマジネーションは外国人実習生の件でも話題になっていたので、最近悪い意味で有名ですね…。ファッションデザインはパクリパクられの世界なので、業界の方々からしたら「今更…」というお話でしょうけど、最近は模倣したらソーシャル上で晒されるという文化が広まってきていますので、エンドユーザーに模倣がばれる確率が高くなってきているように思います。

 

僕は法律の専門家では無いので法的なところはよくわかりませんが、業界で起こってきた事をまとめた個人的な見解を記載しておきたいと思います。

 

 

○似たような商品はマーケットに掃いて捨てるほどある

そもそもなんですが、日本のマーケットを見渡してみると人気ブランドが他ブランドの商品を模倣しているケースはよく見られます。(最近はmameというブランドがよく模倣されているので、Twitterで「mame パクリ」と検索するとわんさか出てきます。ちょっと前まではsacaiの模倣が多かったですね。)

 

某人気ブランドのプロデューサーは、海外の古着マーケットから商品をサンプルと称して仕入れてきて、それをそのまま模倣して日本のマーケットで販売しているという話もよく聞こえてきたり。

 

某ブランドの企画のお仕事は、違うブランドの商品の写真を工場に持っていき、「これと同じ物を作って欲しい」という指示を出す、というものだったり…。

 

こんな話は業界に掃いて捨てるほどありますね。

 

新シーズンが始まると決まって店頭リサーチに行くんですけど、SPAの売り場はどこも似たような商品が並んでいたりします。「トレンド」というファッション業界の従来からあるシステムのせいか、皆が一様にそこを目指して生産するのだから驚く事でもありませんが。

 

業界全体がこんな状況なので、もちろん訴訟問題も多く報じられてます。一番多いのは皆さまご存知の「ZARA」ではないでしょうか。

 

日本発「ザ・リラクス」が巨大SPAブランド「ザラ」に勝訴 「ザラ」がコートの形態を模倣

 

ファストファッション最大手ZARA、イタリアのディーゼルを擁するOTBグループに製品模倣で訴えられ敗訴

 

 

ZARAのパクリ騒動は頻度が高いせいか「またか…」という印象をお持ちの方も少なくないでしょう。むしろ、店頭見る限りはもっと他のブランドに訴えられてもおかしくないほど模倣が目立ちます。

 

そんなZARAに勝訴したディーゼルですが、

 

スニーカーがバレンシアガやリックオウエンスのパクリだと言われてる訳でして。まさに「おまいう…」状態。やはりファッションブランドはパクリパクられが循環してますな…。

 

 

 

○模倣したという意識さえ無い場合もある

盗用した側にはそもそも「パクった」という意識が無い場合もあったりしますね。今回のデザインも、「パフスリーブ デニムワンピ」と検索しただけで

 

 

似たような商品はちらほら出て来ます。下手したら小嶋さんが他の商品のデザインをパクったと言われる可能性もある訳で。今回のケースでは、同じシーズンで販売されている商品ですから、生産リードタイム(40日くらいが適正)考えたらその商品を見てすぐ生産に回してると売り時逃すケースの方が多いんではないでしょうか。セシルマクビーの担当者からしたら寝耳に水状態かもしれません。

 

では何故、上記のような事が発生してしまうかと言いますと、ODMに丸投げの場合、同シーズンで別のブランドが似たような商品を展開するという事態が起こりうるかと思います。

 

ODMとは…Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産すること。

 

ODMとは、ざっくり言いますと業者が製品を作り上げてくれて、ブランド側はブランドネームのタグだけ付けるって事です。

 

最近流行りのD2C系ブランドが仕入れによく使う、韓国の卸市場もこれに当たりますね。「ブランドの世界観」という名の編集を施す事により、違う商品のように見せているだけで、展開される商品は似たり寄ったりです。売り方しか考えていないのですから、物に対するこだわりなどほとんど無いのが現実でしょう。

 

皆さんのご自宅近隣に必ずと言っていいほどあるショッピングセンターに行けば、仕入先が同じODMなのか、ブランドのタグが違うだけで全く同じ商品が並んでいる事もそう珍しくはないのです。

 

この場合、完全なコピー商品とは問題の根本が異なりますので、対策しようがあるのか謎ですね。なんせ商品が同じであるという事に、事業者側も無自覚なのですから。

 

 

○オマージュなら許される?

オマージュ=敬意・賛辞

という意味で、ブランドに対する尊敬の念が強く、影響されたからこそデザインを取り入れるという意味合いですかね。これに関しては、側から見ると模倣との違いがよくわからないのですが、

 

イケアが23万円のバッグと99円のバッグの見分け方について説明

 

バレンシアガのIKEAのバッグはオマージュという捉えられ方のようです。自ブランドにとって良い影響であればオマージュ、という事なんでしょうか。

ちなみに10数年前、ワールドからDior hommeそっくりなUNTITLED MENというブランドが販売されていたのですが、店頭に行くと何故かDior hommeが掲載された雑誌が置かれており、販売員さんも「Dior hommeからインスピレーションを受け…。」と意味不明な事を話されていました。これもオマージュなのか…?

 

 

○フォロワーが多いほど模倣されにくい?

悪い事では無いのですが、最初に声をあげる人の拡散力によって問題とされる大きさも違ってきます。小嶋陽菜さんはTwitterでフォロワーが300万人を超えていますので、リーチはかなりあったんではないかと。しかし、冒頭でも少しお話したように、mameの模倣が最近は多いのですがメディアが報じるほどの話題性はありません。少しばかりRTされたりしますが、ブランドの不買運動が起きるほどではないでしょう。フォロワーが多いほど、模倣の抑止力になる、というのは今の時代らしいですね。故意的で無い場合はちょっとかわいそうな気もしますが…。

 

 

○その他に模倣を防ぐ方法はあるのか?

僕が以前勤めていたブランドでも、他ブランドと酷似した商品は少なからずありました。「これ、ディオールオムっぽいな。」とか「サンローランで同じ商品ありましたよね。」とか、そんな会話が当たり前のようにショールームで飛び交っていたのを思い出します。パリコレクションやミラノコレクションに出ているブランドであろうが、こういう事態は起こりうるものです。

そんな業界で、僕が当時の先輩から言われて今も記憶に残り続けている言葉があります。それは「ブランドとして偽物を許さないという姿勢が重要」という言葉です。言われてみれば確かにこれをやり続けているブランドが、市場でも価値を保ち続けているように感じるのです。

 

モノグラム  世界初ブランドネームデザインの優れた製品

例えばルイ・ヴィトンはアイコンとなるダミエやモノグラム、エピの意匠登録をした上で、模倣品の事業者を見つけると警告文を送るなどの措置を取っています。多くの人が有名ブランドを知覚してるのってアイコンアイテムだったりするので、ここを模倣された際には特に徹底的に戦う。こういう動きが重要なのだと改めて痛感します。

 

グッチ対ゲス商標権侵害訴訟 9年にわたる訴訟に終止符

 

米コンバース、スニーカーの意匠権侵害で日米31社を提訴

 

思えば、こういった訴訟の争点になっている多くのケースがブランドのアイコンアイテムです。類似商品が市場に多いと模倣かどうかの判断も難しくなるので、アイコンがある方が判断しやすそう。

 

ZARAのように模倣する方が経済合理性が高いと判断している企業が存在している限り、ファッションデザインのパクリ騒動は今後も無くなる事は無いでしょう。「ブランド パクリ」で検索すると、日々どこかのブランドが何かを模倣しています。購入する側からしても、安価で似たようなデザインの物が手に入るのであれば、そちらを選択する人も必ず出てきます。あくまで悪いのは模倣する側なのですが、それでもブランド側が「偽物は許さない」という姿勢を強く持つ事こそが求められる事なのではないかと。また、そういった姿勢こそがブランドに対するロイヤリティを高め、「模倣」というファッション業界の一種の呪いのようなものから唯一解き放たれる手段なのではないでしょうか。

 

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

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