ブランド・ビジネス  2019-08-05

手段の目的化は必ず失敗に終わる

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。

プロ野球の名監督、野村克也氏の言葉で、勝つときには偶然や幸運が手伝ってくれることがありますが、負けるときには負けるべくして負けるという意味です。

これはスポーツやビジネスをやったことのある人には激しく同意できるのではないかと思います。

 

多くのブランドが失敗に終わる場合も同じで、不思議なヒットはありますが、不思議な不振はありません。不振になるべくしてなっています。

その原因は考え違いです。

今回、発表された三陽商会の新ブランドもそんな雰囲気が漂っています。

 

「映画を見ながら服の購入が可能、三陽商会から新ブランド「キャスト:」がデビュー」

https://www.fashionsnap.com/article/2019-07-31/cast-sanyo/

 

三陽商会は、20代後半〜30代前半の女性がターゲットの新ブランド「キャスト:(CAST:)」を立ち上げた。実店舗での展開に加えて、オンライン上で公開する映画作品から商品が購入できる日本初のシネマコマース型のマーケティング手法を導入。

 

という内容です。

 

現在、アパレルも含めて、すべての製品は物余り現象で、単なるスペックや価格だけでは売れにくくなっています。そこで使用時のイメージや使うと生まれる効果など「コト」を重視した販売や販促が主流となっています。

この三陽商会の新ブランドは「コト」販売を重視した施策だといえますが、果たして、これが効果的なのでしょうか?

新ブランドを発売することは理解できます。しかし、これが無名の自主製作映画と連動していることがどうしてセールスポイントになると考えるのでしょうか。根本的な考え方が間違っています。

 

すでにある人気ドラマや人気映画、それの続編や最新作とタイアップするなら、話は別です。

例えば、話題作「天気の子」でもよいのですが、ここに登場するキャラクターがいつもこのブランドの服を着ている(アニメ映画なので実物ではなく絵になりますが)というタイアップなら、売れないまでもそれなりに話題となることは確実です。

しかし、服を売るために自主製作映画を作るというのでは本末転倒です。

しかもその映画は30分弱もあるのです。

忙しい現代女性が無名の映画をわざわざ「試し」に30分も見るでしょうか。5分や15分くらいのショートムービーならまだしも。

これは本来、手段であるための「コト販売」を目的化してしまった悪例ではないかと思います。

しかも、映画が売りのブランドなのに「次回作は未定」と発表されています。こんな杜撰な計画はあり得ません。

アパレルや繊維業界にはこういう手段の目的化がよくあります。

 

今回の三陽商会はコト販売の目的化ですが、他の場合だと、ネット通販を行うことが目的になってしまっていたり、AI(人工知能)を導入することが目的になってしまっていることが珍しくありません。

どうでしょうか?業界の人は心当たりがありませんか?

売れるなら、売り方はネットであろうが露店であろうが実店舗であろうが何でも構わないのです。しかし、ネット通販を開始すること自体が目的になってしまっている会社はアパレル・繊維業界には珍しくありません。クラウドファンディングも同じです。

クラウドファンディングは手段に過ぎないのに、クラウドファンディングを行うことが目的となってしまっている小規模零細ブランドが多く見られます。

AI導入も同じで、的確に分析をするためにAIを導入するのであって、AIを導入することが目的ではありません。的確に分析ができるならAIでなくても構わないのです。

 

手段を目的化した会社やブランドは必ず負けていますので、くれぐれもご注意ください。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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