ブランド・ビジネス  2019-08-26

ジーユーが990円ジーンズを発売したのは10年も前だという衝撃

衣料品業界で値上げは難しいと言われますが、低価格ブランドの代表ともいえるジーユーがかなり値上げしているのをご存知でしたか?

と言っても、ジーユーは明快に「値上げします」とは発表していません。気が付いてみると、値上がりしていたという感じです。

恐らくは、生産コストの上昇や経費の増加を吸収させると自然と値上がりしたというところではないかと推測しますが、ジーユーの値上げがまったく話題とならないところに、その巧みさが伺えます。

 

ジーユーはもともと廉価版のユニクロとして誕生しました。ユニクロ商品の1000~2000円安いというのがもともとの設定です。商品内容はユニクロの劣化コピーです。

スタート当初はそれなりにメディアが取り上げましたが、さして伸びないままに時は経過します。

売上高が伸びなかった理由は簡単です。メディアが騒いだほどには消費者にはメリットがなかったからです。なぜなら、同じ商品内容でユニクロよりも1000~2000円安いというのが売りですが、ユニクロもしょっちゅう期間限定値引きしますし、定められた販売期間をすぎれば大幅値引きをして売りさばきます。何もわざわざ品質に劣るジーユーの商品を定価で買わずとも、ユニクロが値下がりするのを待てば済む話です。

これはちょうど、我が国でGAPの廉価版のオールドネイビーがまったく売れずに2017年に撤退したのと似ています。

GAPは定価こそ高いですが、待てば投げ売り価格にまで下がります。何も品質に劣るオールドネイビーをわざわざ定価で買わずともよいのです。

 

鳴かず飛ばずを続けていたジーユーは最後の賭けに出ます。2009年に990円ジーンズを発売し、それで圧倒的に知名度を高めました。

翌2010年からは脱ユニクロで、トレンド追随型のファストファッションへと変貌し、あっという間に2000億円ブランドにまで成長しました。

いうまでもありませんが、ジーユーが2000億円に成長したということは、その分、削られたブランドがあるということです。

 

メディアが大々的に報道し、ジーンズ業界に大きな衝撃を与えた「990円ジーンズ」ですが、実は店頭にはそれほど長い期間存在しませんでした。

2012年頃にはほぼなくなっていたと記憶しています。(もっと前になくなっていたかもしれません)

 

記憶ではその頃のジーユーのジーンズは1490~1990円が定価でした。

 

もっとも「ジーユーは安い」という印象は今でも損なわれていません。

Tシャツやセーター、シャツなどの軽衣料で定価1990円を上回る商品は特殊な例を除いてはほとんど見当たりませんし、その印象を強めているのは、破格値の処分価格です。

処分価格はカジュアルパンツ(ジーンズも含む)なら590~990円くらいになりますし、Tシャツなら390円、布帛シャツなら390~990円に値下がりします。

ですから「安い」という印象は崩れません。

 

しかし、ことジーンズに限って見ると、2009年に世間を大いに沸かせた990円ジーンズは、2019年秋には2490円になっています。

 

 

値上がりした金額は実に1500円、値上がり率は251%と倍増以上になっています。

 

衣料品業界には「値上げが難しい」と嘆く人は多くいるのですが、ジーユーの巧みさを見習ってみればどうでしょうか。

ジーユーはいとも簡単にジーンズを251%値上げしています。

 

逆にいうと、「まともなジーンズ」を作ろうと思うと最低価格は1990円にならざるを得ないということでもあるでしょう。

 

それにしても驚くのはジーユーが990円ジーンズを発売してからすでに10年が経過したということです。

光陰矢の如しとはよく言ったものです。

 

我々オッサン・オバハン世代は10年前というと昨日のことのように覚えていますが、若い人はそうではありません。20代の人は10年前はまだ学生だったのです。

ということは、20代の人は990円ジーンズの記憶をほとんど持っていません。

恐らくオッサン・オバハン世代が持っているイメージとは、低価格ブランドそのものに対しても異なったイメージを持っているのではないかと思います。

 

若者世代は所得の伸び悩みや人口の少なさ故に大きな市場ではないといわれますが、今の老人世代は20年後くらいには確実に全員死んでしまいますから、アプローチをかけて次世代顧客を作る必要があります。

その際は、中高年世代とは異なるアプローチが必要になるでしょう。それは低価格商品でも同じことで、これまでと異なるアプローチが求められることになるでしょう。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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