ブランド・ビジネス  2019-09-02

海外進出に成功した小規模ブランド

世間的にはまるで知られていなくて、なおかつ小規模でも非常に上手くビジネスが回っているブランドがいくつもあります。

今回はそんなブランドを一つご紹介したいと思います。

 

日本国内のアパレル市場は伸び悩んでおり、だいたい9兆3000億円内外で行ったり来たりしています。

これにはさまざまな要因があり、一概に決めつけられません。すでに多くの人が自宅に洋服をたくさん持ってしまっているということも理由の一つといえます。

国内で売っている服は価格に関係なく、だいたい最低でも3年間くらいは持ちます。

終戦直後から高度経済成長期までのように物不足の時代ならいざ知らず、今の世の中で被災した人を除いては「明日着る服がない」なんて人はいません。

ですから高度経済成長期のようにジャンジャン服を買うなんてことはよほどのマニア以外はありえません。

 

一方、世界的にはアパレル市場規模は拡大していますが、これは発展途上国の経済成長によるもので、先進国の市場規模はそれほど増えていないと言われています。

先進国の成熟度合はどこも我が国と似たようなものだといえます。

 

国内の市場規模は横ばいが続いていますから、新規参入ブランドはなかなか成長できません。

成長方法としては2つあります。

 

1、他のブランドの顧客を奪う

2、海外へ進出する

 

です。

国内で成長するには他のブランドから客を奪うほかありません。

それが嫌なら、海外へ進出して売上高を増やすしかありません。

 

しかし、海外進出といっても、国内の錚々たるアパレルブランドが挑んでいまだにあまり成功がありません。

ユニクロ、無印良品くらいでしょうか。

 

海外進出というと莫大な費用をかけて計画的に行うものだとついつい思ってしまいます。

そしてそのため、大手でなければ難しいとも思ってしまいます。

ですが、そんなことはありません。

 

C.T.plageというニットブランドです。

http://www.ct-plage.com/ja/

高品質素材にこだわった高価格なベーシックなニットブランドです。

 

 

国内ブランドには憧れが強いヨーロッパ諸国の専門店への卸売りをメインとしています。

現在、売上高は国内外合わせて卸売りで4億円弱あります。

1億円強が国内専門店への卸売り、残りの3億円弱が海外専門店への卸売りという比重になっており、国内よりも海外での売上高の方が大きくなっています。

今、高価格帯の新進ブランドで、卸売りだけで4億円弱あるブランドがどれほどあるでしょう。

 

ジャンルは異なりますが、ハザマ(ha | za | ma)というブランドが卸売りのみで売上高1億円を越えたというニュースが報じられましたが、C.T.plageは4億円弱ですから、新進の卸売りブランドとしてはとてつもない売上高を築いているといえます。

国内では50~60店くらいの専門店へ卸し、海外は2019秋冬で400店くらいの店に卸しています。

 

海外進出は大手でなくても可能だということを証明しています。

ただし、この進出には再現性がありませんから、注意が必要となります。

 

言葉もそれほどできず、ツテもなく、とりあえず12年前にヨーロッパへ飛び込んで行ったそうです。

飛び込んでみるといろいろと幸運が重なって取引が増えて行ったのだと言います。

ですから再現性はありません。再現できるかもしれないし、できないかもしれない。

とはいえ、挑戦しないことにはチャンスも訪れません。

挑戦したからこそチャンスをつかめたともいえます。

 

そして、ヨーロッパへの卸売りが可能になって、解決したことが売り上げ規模拡大のほかにもう一つあります。

国内のニットブランドは春夏は苦戦し勝ちです。なぜなら、得意とするセーター類は秋冬の気候でしか売れません。春夏、とくに夏場は暑くてセーターなんて着ていられません。そのため、春夏は商材がないか、もしくは無理やりに不得意なブラウスやTシャツを売るか、というニットブランドが多くあります。

しかし、冷涼な気候のヨーロッパを相手にすることでC.T.plageは不得意な春夏商材を工夫する必要がなくなりました。

 

ヨーロッパの夏は昼間が暑かったり、歴史的な熱波が襲来したとしても、朝晩は気温が一桁台に下がったり、熱波が長続きしなかったりするそうです。

そのため、春夏でもウールやカシミヤのニット類・ストール類が売れるそうで、C.T.plageは春夏でもウールやカシミヤのニット、ストール類を企画生産しています。

春夏向けに無理やり不得意なブラウスやTシャツを作らざるを得ない国内ニットメーカーからすれば羨ましい限りといえます。

いくらファッショントレンドだ、トラッドな着こなしだ、と言ったところで、洋服のニーズは所詮気温で決まる部分が小さくありません。

ファッショントレンドやコーディネイトで無理やり暑い時期にニットを売らずとも、売りやすい気候の国に持って行くというのも一つの方法で、その結果、自ブランドの弱いアイテムに時間を取られることなく、強いアイテムに特化できるというメリットも生まれます。

 

いかがでしょうか?

小規模ブランドでも工夫次第で海外進出もできますし、良いビジネスモデルを作ることも可能なのです。このような国内ブランドがほかにも多数生まれてくることを望まずにはいられません。

 

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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