フルフィルメント  2017-12-19

ECを強化したら売上が改善する?

ネット通販はアパレル再生の処方箋ではない

店もECも、結局は顧客との接点でしかないんです。それが分かっている企業はうまくビジネスができているが、ECを赤字で続けているところもあります。いまのままECをやるなら、低価格衣料にまでタッチしないと厳しいでしょう。もしくは限定にしてECでしか買えないとか。一方で、ウェブ系の企業がリアル店舗に進出していますね。なぜなら、リアル店舗は多様なデータが取れるからです。消費者その人を象徴するような買い物は、リアル店舗でしていることが多いんです。デジタル化は別にEC化ではありません。

 

お題の通り、昨今のアパレル企業決算報告書を読んでいると確実に目にするのが「EC強化」という文言。現状、ECの市場規模は右肩上がりに伸びており、顧客の購買行動もどんどん変化していますから、当然正しい施策ではあります。しかし、現場で様々なアパレル関係者と接していると、やや間違った認識をしているように感じております。

 

◯EC自体が需要を創出する訳ではない

顧客の購買行動の変化から、webでお買い物する方の数が増えているのは事実です。そういった一部のwebで購入したいユーザーを適切に拾う事で機械損失を防ぎ、顧客一人一人のLTV向上を目指す。またプチプラ系ブランドであれば、ブランドに対する需要というよりはアイテム軸での需要で購買を促す事は可能でしょう。

 

しかしEC全体の市場が伸びているからといってブランド自体の需要が伸びると思ったら大間違いです。そしてその事を理解せず、「ECをやれば売上が伸びる」と思っている方が非常に多い。実店舗を運営しているブランドであれば、まずは店舗の顧客に認知してもらわなければなりません。リアルだろうがwebだろうがそれは顧客からすればタッチポイントの1つな訳で、それぞれをブラッシュアップする事でファン獲得を日々しなければならないのです。

 

あと、webを積極的に使うのって、大半が20代〜40代です。ミセス系ブランドの相談も受ける事がしばしばありますが、どうやって年齢層の高いユーザーにリーチするのか?というポイントが抜け落ちている事もあります。webは万能ではありませんし、年齢層高いユーザーを抱えて成功しているECって、カタログ通販や雑誌メディアを運営してたりと大概は集客装置持っています。まずはしっかりと市場調査してから参入しないと自殺行為です。

 

◯勘違いしやすいブランド認知度

ではどうしたら需要を創出できるか?という事ですが、これはブランド認知度とロイヤリティを向上させるしかありません。価格に対するコスパではファストファッションに太刀打ちできませんから。だからこそまずは認知してもらい、ロイヤリティを高めていかなければなりません。しかし、まず前提として自社のブランドがどの程度認知されているかを客観視できない事業者も非常に多い。

 

実店舗が中心だった時代には気づきにくかったのですが、出店場所がユーザーの生活圏の中であればブランド自体を認知していなくとも売れるケースがあります。インターネットと違って価格比較もしづらいですしね。そうなるとブランドロイヤリティが低くとも売上があがるケースもある。しかしweb、特に自社ECの場合ですと認知度低いと買いにすら来てくれませんん。ZOZOTOWNのような集客力のあるECモールならこの限りではありませんが、モール内でも認知してもらう為にはクーポンを巻くか、そのサイト内で広告費を払い、露出度を高めるかになります。そして価格比較が容易な分、ブランド認知が低いと安いところが売れやすくなるという構図です。

 

◯webの影響でコンセプトメイクが重要になった?

webの力が強くなってきている昨今では「刺さりやすい」ブランドが有利になっている印象です。それは例えばカテゴリーキラーやアイコンが確立されたもの、「〜の為の服」のように何かに紐付いているものや製品にちゃんとしたストーリーのあるもの。マスメディアが機能しづらくなり、可処分時間がソーシャルに移行した現代では、「インフルエンサー」と呼ばれる、より細分化されたメディア(のようなもの)のエンゲージメントが高く、趣味嗜好もそれに応じて過去より細分化されています。百貨店アパレルが企画するような従来通りのふわっとしたコンセプトメイクではユーザーには刺さらず、ファン獲得ができない=webでも売れないとなりやすい。過去よりコンセプトメイクが重視されるようになっている理由はこれではないかと考えております。

 

つまり、ECのなかった時代からやらなければならない事など本質的には何も変わらないのです。まずは需要を創出する事。テクニカルな部分はその後の課題です。その事を理解せず、メディアに毎日のように踊る「EC強化」「IoT」「AI」のようなバズワードに踊らされず、地に足をつけて自分たちの顧客と向き合っていきたいものです。

 

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

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