ブランド・ビジネス  2018-12-27

アパレル経験ゼロでもラフォーレ原宿出店を実現させたブランドディレクターのショップ運営手法とは【後編】

30秒で読める前回までのあらすじ。

「JESUS SHOP」「vannie tokyo」のディレクターであるヤマサキエリカさんは中学時代から個人ビジネスで稼いでいたのですが、その弊害から高校を5年通う羽目に。人生をやり直すべく、webの技術を身につけようと専門学校へ入学し、無事就職までたどり着いたのも束の間。従来の飽き性を発動してしまい退職して単身アメリカへ。そこで「古着屋をやろう!」と決意しますが…。

 

前編はこちらです。

 

 

○古着屋開業!しかし早速問題が勃発…

三ヶ月のアメリカ滞在から帰ってきたヤマサキさんは、その思いが冷めやらぬ前に、早速古着屋開店の準備に取りかかります。最初はオンラインから始めようという事で、ここで前職のスキルが発揮されます。ECCUBEというオープンソースのCMSを使ってごりごりサイト構築を進めていきます。これ簡単に言ってますが、3年弱の勤務で1からECCUBEでサイト構築一人で全部できるのってちょっと並みじゃないです…。どんな激務をこなしてたのか想像できる。。

 

しかしここで一番重要な点を見落としていた事に気付きます。それは、

ヤ:「古着の買い付け資金が無かったんです(笑)」

 

いや、それ一番最初に気づくやつやん…。ここでも「とにかく先に行動する」という癖を発揮するヤマサキさん。考えるより先に行動するのはできる人の習性なのか。。

 

資金集めの為にはコストがかからない物を販売しようという事で、まず手がけたのがZINE(ジン)の販売でした。

オシャレな人に流行!「ZINE」って知ってますか?

 

(キャラ的に一瞬お酒の方かと思ったのは内緒です。)こちらを自前で制作していきます。※現在も継続して販売しています。

 

こういうやつですね。1つ1000円で販売を開始します。それがまず100部ほど売れて10万円の資金を捻出。この資金を元に次はキーホルダーを制作。それがまた売れれば今度は靴下→Tシャツ…というように、コストがかからず簡単に作れるものから順番にどんどん単価を上げていったのです。これらは全てInstagramのみで宣伝しています。(それで100部売るっていうのもすごい…。)

 

 

Tシャツに外国人モデルを起用しているのか…。世界観にお金かけてるな。。と思っていたらこちら、、

ヤ:「Instagramでかわいいと思ったロシア人にDMで依頼しました。ギフティングだけでモデル費は発生してません。写真はこの子のおかんが撮影したようです(笑)ちなみにwebサイトのキーヴィジュアルにも起用させてもらいました。」

 

との事でした。いや、本当「リソース無いから出来ない」っていうのがいかにしょーもない言い訳なのかと痛感させられますね。。

 

【ここがポイント!①】
ブランドにはエントリーラインという、比較的安価で買いやすいアイテムが存在します。JESUS SHOPの場合、それがZINEにあたりますが、このチョイスが秀逸。なぜならブランドの世界観を演出するには最適なアイテムだからです。ロシア人のモデル起用もそうですが、資金が無いなら無いなりの戦略がありますし、むしろ余計な事にお金を使わず健全な成長ができるのだなぁと感心しました。

 

 

○資金が貯まったのでアメリカへ買い付けへ!

半年で買い付け資金が50万円ほど貯まりましたので、これを元に古着の買い付けの為にまた渡米します。しかしまたまたまた問題が発生。。

 

ヤ:「古着どこで売ってるか知らないで出発したんです(笑)」

 

到着してからこれに気付きます。ある意味ブレない生き方で清々しい…。早速その辺にある古着屋に聞き込み調査しますが、やはり大概の買い付け先は大きい古着屋としか取引きをやっておらず入り込めない状況。現地の古着が好きそうな人間や古着屋のお姉さんに再度ヒアリングしてみたところ、ロングビーチやローズボールというフリマの存在を初めて知ります。価格帯はそれでもまだ高いんですが何とか買い付けできる場所が見つかります。行ってみると日本人がめっちゃ多く、そこでフリマのおっちゃんと仲良くなるのですが、その方が何と大きい古着屋の倉庫の余りを販売していたのです。僥倖っ…!なんという僥倖っ…!

 

やっと大きい倉庫に入り込む事に成功したヤマサキさんでしたが買付け金額にミニマムがあるので、ここでも簡単に買付けができる訳ではなく…。こちら以外にもスリフトストアという現地のリサイクルショップで買い付けをします。しかしこれら以外に、一番効率良く買い付けができる場所があったようです。それは民家での遺品整理。アメリカでは葬儀後、一般の民家でも遺品整理の為、故人の自宅を解放して遺品を販売しているのですが、これが破格に安い。どんな服でも大概1ドル程度で買えるようです。しかも結構価値の高いものがごろごろあるようで。

 

様々なマーケットを回りに回って100キロほどの古着をパンパンに詰めて持って帰ります。今ではこれを年に2〜3回は行っているようです。

 

【ここがポイント!②】
通常、古着はそもそもECの販売に向いていません。何故なら、ECはAmazonに代表されるように「ロングテール」で売上が最大化されるからです。つまり、SKU数を多くとり、売れ筋は縦に積んで、後はクイックレスポンスでとにかく売れ筋中心に売上を獲得していくのが通例です。古着は1点ものなのでそれが不可能な商材です。しかし、ヤマサキさんからすると「一人で運営しているからこそおいしい」との事。理由としては1型あたりでロットを積まなくていいので在庫リスクが低い。個性を突きつめた買い付けをすれば、独自性が担保できるので付加価値が高まる。との事でした。とにかく幅広く取り扱うと世界観が薄まり、価格競争になってしまいます。ニッチだけど確実に需要があるというゾーンを狙うのが得策なようです。そして古着にとっては、傷やダメージは個性とも捉える事ができます。唯一無二の商品という見せ方ができているからこそ、ファンが集まり、ある程度の単価で販売する事もまた可能になっているのです。

 

 

○既にファン獲得できていたのでセールスも好調に推移!

事前に低単価のアイテム販売でリーチを伸ばしていたので、買い付けた古着がオンラインで簡単に売れていきます。この当時でフォロワーが既に15000人ほど。エントリーアイテムでファン獲得と世界観を伝え、Instagramで顧客管理と販売促進。めっちゃ理想的ですね。。

 

そうこうしているうちにInstagramで「お会いして話を聞きたい。」という方が現れます。普段なら怪しい連絡は無視するところですが、たまたまその日時間があったのと、お店に興味を持ってくれているようだったので会おうという事に。その方が何とラフォーレの関係者の方で、お話してもすっかり意気投合。話の中で、「1店舗空きがあるから出店してみないか?」という事になります。僥倖っ…!なんという僥倖っ…!(調子に乗りましたすみません。)

 

前に出店していたアパレル企業さんのバックアップの元、ヤマサキさんがディレクションするブランドを出店しないか?というお話でした。ここで生まれたのが「Vannie Tokyo」です。しかしいくらラフォーレ出店といえど、新規ブランドが簡単に売れるほどアパレル業界も甘くはありません。そこでヤマサキさんの取った戦略は、

 

JESUS SHOPの影響力をVannie Tokyoに流す。

 

というものでした。ディレクターが同一人物なので確かに親和性があります。ただ、その前にそれがどの程度販売に寄与するのかデモンストレーションを見せないと周りは納得しません。時間も無い中、ヤマサキさんの決断した内容がBASE出店でした。

 

ヤ:「先にECをスタートする事になったんですが、その時にはパンツ1型しかあがってこなかったんです。でも10点で10万円ほど売れました(笑)」

 

パンツ1型だけで販売する方もすごいですが、それで10本、、しかもBASEで売るってもはや神業。。MD設計とかコンテンツマーケティングとかは、結局欲しいと思えるブランドの根幹を作り上げてからのお話。そんな大切な事に改めて気づかされます。ショップも2年半継続しまして今では店頭・オンライン合わせて年商1億円。お店の販売員はいるものの、ほとんど一人でこれを作り上げる力に脱帽します。

 

 

○2年半周期がまた発生

前編でもお話しましたが、ヤマサキさんには2年半周期で今やってる事をやめたくなるという病があります(笑)元々30歳になったら今手がけている事を辞めようと思っていたらしいのですが、ラフォーレの更新のタイミングが丁度良い時期だという事でVannie Tokyoのディレクターを辞める事になります。企業としてはブランドを拡大路線に持っていき利益を増やしたい。そういった思惑がヤマサキさんの感覚とは合わなくなってきたようです。現在は来年に向けて、逆に日本の物を海外に売ろうと画策中。日本国内はインフルエンサーマーケで溢れていて、どうやら魅力的に見えないようです。

 

ヤ:「今考えている事は、広告宣伝費を使わずソーシャルメディアだけで世界に拡販したいです。そしてジャパンエキスポに出たい。ゴミ扱いされているものを宝に変えたい!」

 

確かに国境を越えれば価値が大きく変わるものってたくさんあります。常に自分の感覚を大切に大事な決断をされているヤマサキさんですが、昨今の経営のトレンドである「アートとサイエンス」に通づるものを感じました。

 

 

こちらの本でも自身の決断をする際、指標になるのは自分の美意識である、と書かれていますが、ヤマサキさんの決断もまた自身の美意識を重視された結果なんではないかと。古着屋のお話の際もしきりに「世界観」という言葉を連呼されておりました。そういった自身の美意識に基づいた「こだわり」を発信する事こそが、ファン獲得へと繋がりビジネスを成功に導いているのだと痛感します。市場にはファッションに対する愛も思いも無いような商品が溢れていますが、真の差別化を図るのは最後は創設者の思いなんではないでしょうか。

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深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

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