ブランド・ビジネス  2018-12-29

オンワード樫山がZOZOTOWNから離脱した理由とは(訂正)

年末にビッグニュースが飛び込んできました。

オンワード樫山が大手通販ECモールのZOZOTOWNから全ブランドの販売を停止させました。

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01495/

アパレル大手オンワードホールディングスの事業会社であるオンワード樫山がアパレル通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」への出品を取りやめたことが日経コンピュータの取材で分かった。オンワードは2018年12月25日から 「組曲」「23区」「自由区」「ICB」など主要ブランドのZOZOTOWNでの販売を停止。オンワードによれば、退店に向けて準備しているという。

 

https://senken.co.jp/posts/onward-181228

オンワードホールディングス(HD)は、ゾゾが運営するファッション通販サイト「ゾゾタウン」における全ブランドの販売を25日から停止し、退店の手続きに入ったことを明らかにした。
販売停止の理由として、「12月25日から始まったゾゾの新有料会員サービス『ARIGATOメンバーシップ』によって、当社の商品が大きく値引きされ、そのことによってブランドの毀損につながると判断したため」としている。

これによりオンワード樫山の主力ブランド「23区」「自由区」「組曲」などのほか、アパレル関連事業の主要子会社のアイランド、レディスインナー製造小売りのインティメイツ「シュット!インティメイツ」などの商品の販売を停止した。

 

この「オンワードショック」によってZOZOの株価は急落し、一時は2000円を割り込みました。終値も実に10%以上の落ち込んだままです。

 

 

計測用のゾゾスーツが発表された今年初頭には「ZOZOが世界を制覇する」なんて吹聴していたお調子者が多数いましたが、オンワード樫山1社に株価を急落させられる世界制覇者とはいったいどういうことでしょうか?(笑)

しかし、オンワード樫山に代表される大手アパレル・大手ブランドのZOZO撤退は今年夏場から業界内で広く噂をされ始めていたため、「意外」だとはまったく思いませんでした。ただ、オンワードの撤退時期は個人的に予想していたよりも早かったと思います。それほどにZOZOというECモールには何の旨味もオンワード樫山は感じていなかったということになります。

今回のオンワード樫山の商品販売停止は今後、有力ブランド各社の撤退の引き金になると予想されます。

ユナイテッドアローズがZOZO離れへ、ECサイトの開発委託先を変更

オンワードに先駆けてウェブ製作の部分で提携を解消したユナイテッドアローズ、自社サイトでの売上高を伸ばしているベイクルーズ、協業で独自ECモールの立ち上げを発表したジュンとマッシュスタイル、などは早晩ZOZOTOWN上から撤退すると見られています。

 

ではオンワード樫山が浮き彫りにしたZOZOTOWNの問題点を見てみましょう。

報道では「ARIGATO」サービスについて反発だと読めますが、それ以外にもこれが始まる前の近年、いくつかの大手ブランド担当者から直接ZOZOTOWNに対する疑問を聞いたことがあります。

主な物を挙げてみます。

1、出店初期費用として200万円が必要

2、売上高手数料が35%

3、連発される割引クーポンの割引分はブランド側の負担

という3つの理由があります。

大きくは1と2なのですが、ブランド側も同意とは言え3に関してもやっぱり「やりにくい」と感じていた大手ブランドは少なからずありました。これでは小規模ブランドはとてもではないが出店できません。

販売手数料35%が「百貨店並みだからそんなに負担ではない」なんてのんきなことをいう製造関係者もいますがピントがまったくズレています。ECモールや大手ECサイトの運営コストが25%前後と言われている中でZOZOTOWNの手数料は格段に高いのです。そもそも販管費を抑える為のECなのに、百貨店並みに料率を取られるというのも本末転倒です。「百貨店並みだから高くない」という意見はECをあまり深く理解していない人の楽観論に過ぎないといえます。※ちなみに筆者の周辺で35%以上の率を取る百貨店は梅田阪急と新宿伊勢丹以外に聞いた事はありませんが。

実際にこれらを苦にして撤退した小規模ブランドもあります。

 

「集客が多いから」という言い訳も聞こえてきますが、現在、ZOZOTOWN上には6000を越えるブランドが並んでいます。いくら集客が多いと言ってもまったく目に触れないブランドも数多くあります。ショッピングセンターに年間何万人もの入場者があるにもかかわらずまったく売れない店があるのと同じ理屈です。

 

そして、これらの要因に加えて、オンワード樫山独特の背景もありました。こちらの方が大きいといえるでしょう。

 

1、ZOZO依存比率の低さ

2、主要客層がZOZOTOWNユーザーとは異なる

 

この2点です。まず1から見てみましょう

 

大手アパレルのEC売上におけるZOZO比率をまとめてみた

 

この中で大手数社のZOZO依存比率がまとめられていますが、オンワード樫山は2018年3月期の時点でたったの25%にしかすぎません。逆算できるZOZOTOWN内での売上高はこの時点では50億円ほどです。もちろん、なくなれば多少は痛いですが、先に挙げたZOZOTOWNの施策を考えると、50億円がなくなったところで利益的にはそれほど痛手はないと判断したということになります。

自社サイトを強化して売上高を増やせば利益率は高まります。

ちなみに次にZOZO離脱すると目されているベイクルーズのZOZO依存比率は39%です。こちらも離脱できる体制を整えつつあるといえます。

逆に86%もZOZOに依存しているトウキョウベースは絶対に離脱できません。

また、2に対してですが、ZOZOTOWNの主要客層は20代~30代前半までの女性です。しかし、オンワード樫山の各ブランドの主要客層はキャリアからミセスです。20代女性はオンワード樫山のブランドの顧客ではありません。ですからZOZOTOWNから撤退したところで、自社の主要客層を取りこぼすという確率は極めて低いのです。逆に主要客層でもないモールに多額の手数料、クーポン負担、初期費用を支払っている方がもったいないのです。ドブに金を捨てていたと言っても過言ではありません。

 

業界内からは、多くのブランドがZOZOTOWN出店の定借権が来年8月で満期を迎えるので、ここが有力ブランド各社OZO離脱のタイミングではないかという意見も聞こえてきます。このあたりは再度調査が必要かもしれませんが、そういう意見が業界内にあるというのは事実です。まあ、噂にすぎないのかもしれませんが。

オンワード樫山という大手が商品の販売を停止したことによって、各社とも離脱する「言い訳」自体はしやすくなりました。恐らく2019年はZOZOTOWNというECモールにとっては転機を迎える年になることでしょう。

 

【参考記事】

ZOZOのPBは200億円売れるのか?

ECモールの「手数料35%」は高いのか?

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【追記】

・2019年 1月19日

止まらない“ZOZO離れ”……一律割引「ARIGATO」にブランド困惑

年明けからZOZO離脱のニュースが続々と報じられており、「ミキハウス」「4°C」やTSIホールディングスの一部ブランドが販売停止になっております。中には完全に「離脱」を表明しているブランドもあり、ZOZOARIGATOがきっかけとなりZOZOTOWNからの離脱が加速しています。ブランドのラインアップを見ていますと、ZOZOTOWNとは顧客層が完全に被っていないブランドが多く、このような事例は後々どんどんと増えていくのではないかと予測されます。

 

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・2019年 1月31日

ZOZOが計画を下方修正。「ZOZO離れ」についても言及

第3Qの決算が発表され、PBの赤字が125億円。ZOZOARIGATOが原因となり42店舗が撤退しております。

 

ライトオンがゾゾ撤退へ EC事業の大半を占めるもZOZOARIGATOに反発

ライトオンが撤退を表明。次いでベイクルーズも一部商品を非表示にしているとの報道があり、年明けからZOZO撤退報道が続いております。顧客層がマッチしにくい百貨店アパレルだけに止まらず、セレクト大手であるベイクルーズが撤退という事になってくると、出店している既存ブランドへも影響が出てくる可能性があります。上場企業では無い為、詳細な数字は公開されていませんが、

 

自社EC売上が44%増の137億円のベイクルーズ、伸びている理由は? 物流問題の影響は?

 

以前、メディアの取材に応じた2017年末の記事では、

EC全体   275億円
ZOZO売上   107億円 ※ZOZO比率39%から逆算
自社売上   137億円
ZOZO比率   39%

 

という数値です。意図的にZOZOの比率を下げ、自社を伸ばしているように思えます。既に準備していたという事でしょうから、離脱があってもおかしくありません。こちらの記事で取材されておりますベイクルーズのEC事業責任者の村田さんこそ、オンワードで撤退を決断した村田常務ですから、どちらの企業にいても自社比率を高め、他社モールからは撤退していくという方針だったのではないでしょうか。

 

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・2019年2/25

ついにNIKEやノースフェイスも「ZOZO離れ」へ

 

「ナイキ」が小売店に対して、2020年6月から「ゾゾタウン」での取り扱いを一切やめるように通達を始めたと、日本を代表するスニーカーショップを率いる本明秀文アトモス社長がファッション週刊紙「WWDジャパン」(2月25日号)の連載で明言。 また、「ノースフェイス」は今月18日から出品を見合わせており、「完全撤退に向けた準備に入っている」と「夕刊フジ」が報じた。 きっかけはやはり、有料会員制割引サービス「ZOZOARIGATO」(ゾゾアリガトウ)の導入だ。

 

今までは百貨店アパレルやジーンズカジュアルブランドなど、どちらかと言うとZOZOの顧客層とマッチしないブランドの撤退が報じられていたが、とうとうNIKEやノースフェイスまでもが撤退の準備に入ったという報道が。ビッグブランドのニュースだけに、これが更なる影響を生むのではないかと推測されます。

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南充浩
WRITER

1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシャルブログ

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