ファッション全般  2016-02-28

「ファストファッションを買わない」が問題を解決しない理由

どんなに貧乏でも、私が決して「ファストファッション」に手を出さない理由

「エシカルファッション」「フェアファッション」という言葉を最近よく目にします。エシカルとは「倫理的な」という意味で、ファッションが環境に与える負荷を軽減したり、ファッション関連事業で働く人たちの労働環境を整備していこうというのが本来の目的でしょうか。しかし、エシカルを唱えるものの多くは、上記の記事のようなものが中心です。僕はここに非常に大きな違和感を持っています。

 

 

大量生産・低価格化がもたらした「劣悪な労働環境」

トレンドである「ファストファッション」の背景には劣悪な労働環境で働かされ、薄給により生活が困窮している人々がいます。特に東南アジアの縫製工場で働く人たちの事ですね。中には工場の違法増築により、建物が倒壊してしまい1000人以上の人々が亡くなってしまうという悲しい事故も起こっています。「低賃金」「労働環境」「公害」という点が大きな問題でしょうか。(参考記事:ファッション史上最悪の事故から5年、バングラデシュは変わったのか)

 

解決策として、現地の人たちがちゃんとした給与を得て生活できるよう、低価格での販売をやめ、環境に負荷のかからない素材を使い、持続可能なサプラチェーンを築きましょうというのが、いわゆる「エシカルブランド」に多く見られる主張です。

 

 

ザ・トゥルー・コスト -華やかなファッション業界の裏側  知られざる真実とは?-

記事中で紹介されています、映画「トゥルーコスト」は僕も見にいきましたがその問題点が集約されていました。tabi-laboの記事から一部抜粋します。

 

価格の差は品質の差によるものではありません。これは基本的人権に関わる問題なのです。

私たちはそんな過酷な状況で作られた衣類を低価格で購入しているのです。これらすべてが、あなたがわずか8ドル(約970円)でジーンズを購入するために起こっていること。

まずは、量よりも質を重視して購入することです。

 

一見、とても真っ当なお話です。では僕の感じる違和感の原因は何なのか?をご説明致します。

 

ファストファッションを求めたのは顧客

そもそも前提としてファストファッションがここまで拡大したのは、「顧客がそれを求めた」という背景があります。トレンドのファッションを低価格で手に入れる事ができるファストファッションは、ファッションの大衆化を実現しました。大量に売れる=大量に買う人が存在する。個人的に思うのは、ファストファッションほど顧客視点なブランドも少ないという事です。例えばZARAは、「お客が店頭で試着したが買わなかった商品」情報を集めて商品開発に活かします。店頭でサイズが無かったがっかり感を無くすため、店頭からサイズ欠けしている商品を抜きます。そこまでの努力をしている店も少ないでしょう。

(参考書籍:「人気店はバーゲンセールに頼らない」齊藤 孝浩 (著))

 

 

エシカルファッションは不買運動?

 

誰もが気軽にエシカルファッションを楽しめるアプリ「Good on You」とは?

 

オーストラリアの慈善団体がエシカル度をチェックできるサイトを構築したとニュースがありました。これはブランドのサプライチェーンを可視化できる取り組みのようです。先ほど紹介した記事もそうですが、これってただの不買運動を促している印象を受けます。エシカル度(倫理度?)の基準もわかりません。企業の利益が上がれば雇用を更に生み出し、納税額も上がります。こういった「ファストファッションを買わない」事が本当の解決策なんでしょうか。

一部の人がファストファッションを買わなくなったとしても、H&Mは年間400店舗出店していますし、大量生産は止まらないでしょう。そしてZARAやH&MなどのグローバルSPAに限らず低価格帯商品は市場に様々あります。それではこの「エシカルファッション」に引っかかってくるのはどのブランドなのでしょうか?GU?earth music&ecology?WE GO?その他のGMSの衣料品も似たような価格です。今や低価格商材は市場に溢れています。

 

(参考記事:【アパレル業界・基礎講座】 価格編 服の値段はどう変化したのか?

 

グローバルSPAに限らずSCに出店しているようなブランドやODMの商材も低価格で大量に生産されています。(生産量の桁はもちろん違いますが)どの価格帯のブランドの商品の生産がどれくらい抑制されれば、縫製工場で働く人たちの環境が向上するのか?仮に影響があって、ファストファッションの出店が止まったとしても、それは縫製工場で働く人や店頭で働く人の仕事が減るという事ではないのでしょうか。そして在庫は何も服だけでなく、生地や資材もありますから、供給を減らすという事はこのあたりの事業者も煽りを食います。これでは何の解決にもなりません。

 

 

劣悪な労働環境と低賃金はファストファッションの責任なのか?

ファストファッションはほとんどが自社工場で製造していません。提携工場に製造を委託しています。これって、労働環境の改善は工場側の責任なのではないでしょうか。もちろん工賃が安いという理由はあります。それではその仕事を受けないという選択肢はないのでしょうか。ZARAは創業時は製造業でしたが、下請けの限界を感じ小売を始めたという経緯があります。日本でもOEMから始まったブランドがありますし、下請けから抜け出していない工場はどこも工賃は叩かれるようです。

 

国内工場に1枚200円でTシャツを縫わせる大手セレクト

以前、オリジナルでTシャツを作って販売したいという人が東北のTシャツ縫製工場に工賃を交渉しに行った。その工場には某大手セレクトショップから「1枚200円でTシャツを縫ってくれ」という依頼があったが、工場側があほらしくて断ったそうだ。この工場以外にも1枚200円でTシャツを縫ってくれと依頼された国内工場、1枚200円でTシャツを縫っていた国内工場は珍しくない。もちろん発注主はそれ以外の大手セレクトや大手SPAの場合もある。彼らのTシャツは安くても2900円、国内縫製ということになればもう少し値打ちこいて、3900~5900円くらいが店頭販売価格だろう。 

 

上記の南さんの記事からもわかるように、これは東南アジアに限らず日本でも状況は一緒なのです。

 

 

人権を侵害しているのは誰?

問題提起となっている三点。まずは「低賃金」の問題。記事中にもありますが、最低賃金の引き上げが徐々に実現しています。でもこれ、国の制度の問題でしょう。でしたら解決策は不買運動ではなくロビイングじゃないのでしょうか。それをファストファッションを悪者にしても意味がないと感じます。最低賃金が上がらないまま、仮にファストファッションが工賃を上げたとして、工場側が賃金を上げるという保証はどこにあるのでしょうか。

 

「労働環境」にしても同じです。適正な工賃が支払われれば、工場が労働環境に投資するという保証をしてもらったのでしょうか。ここも国内の労働法などの法規制の問題でしょう。

 

そして「公害」について。長く着れるであろう高額品を多数の人が着る事はできるのでしょうか。それこそ低賃金の人たちにとって不可能でしょう。日本国内においてでも、安価でトレンドを反映してくれるファストファッションはこれからも優先して購入されるでしょう。そして、オーガニックコットンをいくら使用しようがゴミは大量に出ます。これ、エシカルファッションで解決するのでしょうか。「長く着れる」で言うと、ユニクロの方が圧倒的に安価で長く着れますよ。

 

 

問題解決はテクノロジーの進化?

大量生産はプレタポルテが生まれてから既定路線だったはずです。ディオールがライセンス商法を始めファッションは大衆化へ進みました。製造コストが下がり、低価格でトレンドファッションを享受できるようになった事をわざわざ「買わない」と選択する人がどの程度いるのでしょうか。キレイ事を言うなという訳ではありませんが、自己満足になっていては問題は解決しないと思います。

 

 

スウェーデンでゴミの99%を有効利用する「リサイクル革命」が起きている

 

テクノロジーの進化といった、このような内容のものでしか問題解決には繋がらないのではないでしょうか。それも現状ではまだ問題解決につながってはいませんが。テクノロジーに関しては専門家ではありませんが、それ以外にも3Dプリンティングの技術向上。現在の技術では、3Dプリンターでゼロベースから服の完成まで数時間、費用は2ドル程度で作成可能だそうです。(wiredより※試作段階ではありますが。)

—————————————————————————————————————————-

【追記】

【在庫処分最前線】「実用化できるリサイクル技術は存在しない」- 在庫処分屋がサステナビリティの最適解である理由(ショーイチ)

 

【在庫処分最前線】「服を生産しなくても在庫は発生する」 -供給量を抑えても解決しない問題がある(WEFABRIK)

 

上記は、当メディアで取材をしております、いわゆる「在庫処分屋」の取り組みですが、世界を含めたリユース・在庫の最適化こそが、現時点で考えられるエシカルの最適解なのではないでしょうか。まだまだ有効的なリサイクル技術も開発途中であり、不買運動は合理性に欠けます。リユースであるなら、消費側からしたれ安価ですし、供給側からしたら不良在庫の処分に繋がります。(参考記事:環境問題を解決するのは、CtoCサービスなのかもしれない

—————————————————————————————————————————-

こういった取り組みの方が、エシカルファッションよりも既存の問題を解決します。ファストファッションを感情的に叩いても逆効果にしかならないんではないでしょうか。

 

 

【関連記事】

「エキゾチックレザーのみ廃止」がサステナビリティーで、earth music&ecologyの「エシカル」が全く倫理的ではない理由

SHARE

  • FacebookFacebook
  • TwitterTwitter
  • Google+Google+
  • LINELINE
深地 雅也
WRITER

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

FOLLOW
  • Facebook
  • Twitter
FOLLOW
  • Facebook
  • Twitter

株式会社StylePicks CEO。ECサイト構築・運用・コンサルティング、リテールのソリューション事業を中心に活動。並行してファッション専門学校の講師も務める。 繊研新聞にてEC関連記事連載中。→ https://senken.co.jp/posts/fukaji01

COMMUNICATION

    Mayuun 5

    2017-07-02

    私は大学のゼミでファストファッションについての個人研究をしています。
    調べているうちにファストファッションの問題点が多く見えてきて、それについて主に調べたいと思っています。
    fukajiさんの記事にもあるように、低賃金による劣悪な労働環境であることが問題だと私も思います。
    が、問題はテクノロジーの進化で解決できるのでしょうか?
    テクノロジーがますます進化、開発、発展されれば人員が必要でなくなってしまい、職を失う人が多く出るのではないでしょうか。根本的な問題解決にはならないと思うのですが、その点をfukajiさんはどう思いますか?

    私は大学のゼミでファストファッションについての個人研究をしています。
    調べているうちにファストファッションの問題点が多く見えてきて、それについて主に調べたいと思っています。
    fukajiさんの記事にもあるように、低賃金による劣悪な労働環境であることが問題だと私も思います。
    が、問題はテクノロジーの進化で解決できるのでしょうか?
    テクノロジーがますます進化、開発、発展されれば人員が必要でなくなってしまい、職を失う人が多く出るのではないでしょうか。根本的な問題解決にはならないと思うのですが、その点をfukajiさんはどう思いますか?

      @fukaji
      @fukaji

      2017-07-03

      仰る通り、もちろん根本的な問題解決にはなりません。なので僕が言っている事も、「劣悪な労働環境」のみにフォーカスしたものに過ぎません。今ある職だけを見たら失われる職は今後更に増えるでしょう。しかし今より10年、20年前と比較してもそれは既にどこでも起こっている事です。無責任かもしれませんが、そうなったら別の仕事をすればいいと思っています。ただ、国の法整備は早急に必要だと思います。それはユニクロやH&Mを叩いたところで無駄ですし、エシカルファッションを掲げる団体よりもファストファッションの方が現実的なソリューションを提示しています。

      仰る通り、もちろん根本的な問題解決にはなりません。なので僕が言っている事も、「劣悪な労働環境」のみにフォーカスしたものに過ぎません。今ある職だけを見たら失われる職は今後更に増えるでしょう。しかし今より10年、20年前と比較してもそれは既にどこでも起こっている事です。無責任かもしれませんが、そうなったら別の仕事をすればいいと思っています。ただ、国の法整備は早急に必要だと思います。それはユニクロやH&Mを叩いたところで無駄ですし、エシカルファッションを掲げる団体よりもファストファッションの方が現実的なソリューションを提示しています。

      N

      2017-11-05

      ファストファッションの問題について学びたいと思っている高校三年生です。どこの大学のどの学部でこの問題について勉強しているのか教えてもらえないでしょうか。

      ファストファッションの問題について学びたいと思っている高校三年生です。どこの大学のどの学部でこの問題について勉強しているのか教えてもらえないでしょうか。

Leave a Comment

SPECIAL 
JOURNALS

BY UP&COMING EDITOR

MORE

CHIEF 
EDITOR’S

BY CHIEF EDITOR

MORE

ランキング